島田荘司

scrumhalf

2008年08月07日 00:10

社会派ミステリの多かった推理小説に、「新本格」派としてふたたび犯人当て(フーダニット)、トリックなどに注目を集めるきっかけとなった作家。特にデビュー作の「占星術殺人事件」は壮大なトリックで話題になり一躍人気作家となった。

人気登場人物がシリーズとして数作にわたって登場したり、社会派ミステリと分類されそうな作品も残している。新本格派の中でもさまざまな作品があるので、作品選びさえ間違えなければかなりの人に受け入れられそう。

ま、その作品選びが難しいのだが…。

占星術殺人事件 (講談社文庫)
(1987/07)
島田 荘司

商品詳細を見る占星術殺人事件 ◎
江戸川乱歩賞候補作。壮大なトリックで驚かせてくれる。これ以上は書けない。
持ってみるとわかるがかなりの分量。ただそれに負けないだけの内容が詰まっている。これから考えると乱歩賞では作品の魅力を引き出すだけのに枚数が足りなかったという気がしてくる。乱歩賞は枚数が結構少ないとあちこちで言われていますのでね…。

もう一つは破天荒な御手洗潔の魅力も作品の面白さ。
以後、数々の作品にこの人物が登場する。御手洗シリーズだけ読んでみるのも面白いかも。

異邦の騎士 改訂完全版
(1998/03)
島田 荘司

商品詳細を見る異邦の騎士 ○
御手洗潔最初の事件と謳われた作品。島田荘司が書いた時代はもちろん御手洗潔の年代も『占星術〜』よりも古くなっている。文字通りの最初の作品。

記憶喪失の男が、自分の過去を探るうちにぶちあたった過去への疑問。それを解決していくなかでさまざまなストーリーが展開される。
決して嫌いな展開でなかったので、サクサクと楽しく読めた。『占星術殺人事件』や『斜め屋敷の犯罪』などに比べて、驚きや壮大さはないがストーリーを楽しみたい人にはなかなかオススメ。

島田荘司初心者にはいいかもしれない。

斜め屋敷の犯罪 (講談社文庫)
(1992/07)
島田 荘司

商品詳細を見る斜め屋敷の犯罪 ○
一風変わった斜め屋敷と呼ばれる屋敷で起こった殺人事件。そしてその難題に御手洗潔が挑む。
『占星術殺人事件』同様、驚きのトリックのため、ほとんど詳しく書けない。
「んな、バカな!」とも思ってしまうそれこそが島田荘司の御手洗シリーズの楽しさ。
島田ワールドは『占星術〜』との初期2作で、かなりの魅力が伝わってくる。

奇想、天を動かす (光文社文庫)
(1993/03)
島田 荘司

商品詳細を見る奇想、天を動かす ◎
もう一つのシリーズ、吉敷竹史が登場するシリーズの最高傑作。島田荘司の作品の中で、社会派とも言える作品で、なかなか読後に考えさせられるような作品。
簡単に解決したと思われた殺人事件の容疑者の過去に興味をおぼえ、吉敷刑事がその過去を探り出したところからストーリーは劇的に動く。

一人の容疑者の過去から今起こった現在の事件。
最終的に導かれる真実は、切なくてやるせなく、怒りさえ覚えそうだが、少し主人公に対して爽快感させ覚えそうな様々な感情が読後に浮かんでくる。

網走発遥かなり (講談社文庫)
(1990/07)
島田 荘司

商品詳細を見る網走発遥かなり  △
不思議な短編を集めた連作短編集。
一つ一つの短編は非常に変わっている。登場人物の行動や設定が奇妙で苦手な人は苦手かもしれない。
しかし最終的に描かれる短編では、少しずつすべてがつながっていく感覚が気持ちいい。

ただあまりに一つ一つの短編が特徴的過ぎて、連作作品として面白かったかといわれると少し首をかしげてしまう。
たとえるなら一人の人生の一つ一つの事件の印象が強すぎて、その人がどういう人なのか見えてこない感じ。事件だけ覚えていて人物像が見えないといえばいいのかな。
連作を作ろうとしたのではなくて、結果的に連作になっていたという印象。本人にそんな気があったかは知りませんが。

ちょっと変わった作品を読んでみたいという人にはいいかもしれない。
とりあえず最後の詩がちょっと素敵。

他購読リスト
『寝台特急「はやぶさ」1/60秒の壁』 △
『北の夕鶴2/3の殺人』 △
『火刑都市』 △
『御手洗潔の挨拶』 ○
『御手洗潔のダンス』 △
『踊る手なが猿』 ○
『暗闇坂の人喰いの木』 ○
『ら抜き言葉殺人事件』 ×
『水晶のピラミッド』 △
『眩暈』 △
『アトポス』 △
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